感情形容詞のファジイ理論による分析

濱本 秀樹

本発表は,人間の持つ主観性に起因する曖昧性を数理的に処理するファジイ理論を使用し,感情形容詞の意味の問題を検討するものである。
1) 形容詞とファジイ関数の形態
形容詞の意味の作業仮説的定義を次の様に提示する。
ある語 X の意味= X に関するファジイ集合を特色づけるメンバーシップ関数
これにより,young, middle-aged 等に関する言語事象がファジイ関数を想定することで説明される。
2) 感情形容詞の同義性とファジイ関係
感情要素と感情形容詞との間にファジイ関数を想定すると,同義語が感情要素を共通の要素として持つことが示される。つまり,語彙集合 V における,部分集合である感情形容詞の同義語の集合とは,感情要素 U の一定の要素に,0 でないファジイ関数を持つものの集合と捉えることができる。
3) 感情を語に置き替えるプロセス
ある感情 E を言語部門の入力としファジイ推論で同義語の関係を求めることができる。
一般にファジイ推論は次の合成式で表現される。
Y = a' ∘ (a → b)
これにより,多様な感情を,一番適切な,近似の表現に置き替えるプロセスが説明される。この語の近似選択過程を脱ファジイ化,聞き手の再ファジイ化を意味化と呼ぶことができる。そうすると,一連のプロセスは次の様に表すことができる。
感情の脱ファジイ化・意味化フロー
感情(E) → 推論 → 同義語の関連度の算定 → 語の選択(脱ファジィ化)┐
感情 (E') ← 再ファジィ化(意味化と) ← 聴取 ← 発話 ←───── ┘