在米韓国人の韓国語・英語の使い分けについて
―場面,話し相手,意識との関連をめぐって―

任 栄哲

アメリカに住んでいる韓国人及び韓国系アメリカ人は,どのような意識を特って日常生活を営んでいるのか,また韓国語と英語とをどう使い分けているのか,意識と言葉の使い分けにはどういう関連があるのか,そのバイリンガルの実態とその背景にある要因を明らかにするためにアンケート調査を行った。
調査は,アメリカ在住の15歳以上の韓国人及び韓国系の人々426人を対象に,ニューヨーク,シカゴ,ヒューストンを中心とする都会とその近辺で,1988年2月から4月にかけて行った。
今回の調査で知り得たことをまとめると,次のようになる。
(1) 韓国語を次の世代に教えたいという「韓国語の伝承意識」はかなり強い。
(2) 場面によって韓国語・英語をどう使い分けているかをみるために,三つの場面(集会・路上・乗物)を設定し尋ねてみた。結果は,どの場面においても英語より韓国語がよく使われるが,同飽があつまる「集会」といったやや堅苦しさを伴う公的な場面よりも巷の「路上」や「乗物」の中といった私的な場面でよく韓国語が使われる。
(3) 家庭の中では,話し相手が自分より年上であるほど韓国語がよく使われる。つまり韓国語を使うかどうかには話し相手の年齢が利いている。
(4) 韓国語の伝承意識と韓国語・英語の使い分けとの関連については,「韓国語の伝承意識」の結果と「場面による韓国語使用率」や[家庭の中の話し相手による韓国語使用率」の結果とをクロス分析した。韓国語を次の世代に「教えたいと思う」人はどの場面,どの話し相手に対しても「教えたいと思わない」人より韓国語の使用率が高かった。すなわち,韓国語の伝承意識と韓国語の使用との間には密接な関連が認められる。