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韓国人留学生の日本語使用における漢字音・漢字語の誤りについて

近藤 清兄

報告者は,韓国人留学生の日本語使用を朝鮮語研究者として身近に観察することを通じ,その漢字音・漢字語の誤りにいくつかのパターンを見出した。ここに漢字語とは,音読みだけから構成されたもののみをいい,所謂重箱読み・湯桶読みは含んでいない。これは分類の便宜からである。
誤りは,ここでは大きく次の四種に分類される。 1. 音韻的な誤り。 2. 漢字音の類推の誤り(架空の字音の構成)。 3. 母国語のなぞりによる誤り(幽言語はここに含まれる)。 4. 連濁や漢/呉音の適用の誤り。
1. は18の下位グループに分けられる。理論的にはもっと多いかもしれないが,ここでは記述的に構成されたもの,即ち実例から帰納したものだけをあげる。単に音韻上の訛りであるならば何も漢字語に限ったことではないが,漢字語に特有の音連続はしばしば特異な誤りのパターンをよびおこすことかありうる。またさらに重要なことには,それら下位グループの誤りが二重三重に複合して聞き手の理解を阻むことがあり,しかも2.,3.,4. の上にそれがかぶさることがあるため,1. の詳細な検討と分類は欠かすことができない。またそれによって誤りの複数の原因を個別に究明しとりのぞくことが可能となる。即ち,そこで問題になった語だけでなく,同じ現象が起こりうるケースについて組織的に誤りを排除することが教育の場で計画化しうるようになるであろう。
2. は,アナロジーの誤りにより現実に存在しない字音を作ってしまうもので,ここには日本,朝鮮それぞれの漢字音の成立と発展の違いが反映し,大変興味深い。漢字文化圏にある者ならではの問題といえよう。 3., 4. とともに,今後の下位分類の細密化を待っているグループである。
あげられている実例90は全て報告者自身の観察になるものである。日本語教育にたずさわる方々の参考ともなれば幸いである。

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