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母国語話者による外国人の作文の誤用判定

遠藤 裕子
大井 恭子

日本語に関する誤用分析は近年ようやく大掛かりな研究も行なわれるようになってきた。しかし,英語等における誤答分析のように一般の母国語話者による誤りの判定調査や,内容理解に支障があるかどうかという深刻度からの誤りの区分などはまだなされていない。我々はそこで,専門家とそれ以外の人とで誤用判定に差があるか,また,誤りの種類によって判定に差があるかなどを調査した。
調査の対象は成人の男女57名で、内訳は,(1) 日本語・言語学教師14名,(2) 英語教師12名,(3) それ以外31名である。外国人の書いた作文から文を30選び,「日本語として明らかにおかしいと思われるところ]に下線を引いてもらう,という方法で行なった。 30文のうち,我々が仮に認定した数えられる(下線を引ける)誤りは43か所である。調査の結果、次のようなことが明らかになった。
1) 誤りの指摘率にグループ間の差が認められた。日本語教師が最も厳しく,英語教師がこれにつぎ,一般の人が最も低かった。(総指摘率 (1) 94. 9%, (2) 85. 3%, (3) 75. 5% χ2=110. 8** (p < 0.01) d. f. =2)
2) 誤りの種類によって指摘率に大きな差が認められた。例えば,語彙より文法が,文法では格助詞などが,より高い値だった。
3) 誤りの種類によって,グループ差の非常に大きいものとほとんどないものとがあった。例えば,動詞と対応しない格助詞はあまり差が見られないが,従節の「は」は,(1) が100%,(2)(3) は約60%となっている。また,(2) の値が (1) に近づく例と (3) に近づく例とがあった。
これらのことから,誤用判定に際しては知識や規範意識をかなり強く働かせる人もいれば,何を言おうとしているのかを理解することに重点を置く人もいることがうかがえる。一般の人の誤用判断基準を知ることは外国語教育の上でも有意義であると考える。

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