“赤い日時計”は時制を有するか?

安仁屋 宗正

aka-i hidokei (赤い日時計)の構造は次のどれであろう?:
(1) [NP [S aka-i] [NP hidokei]] 'the sundial that is red' (Relative Clause Analysis).
(2) [NP [adj aka-i] [NP hidokei]] 'the red sundial' (Simple NP Analysis).
両見方とも裏付けがあるが,RC Analysis は形容詞連体形の存在を認めず他方 SNP Analysis の場合は 'the sundial that is red' の Japanese counterpart の存在を認めないという難点がある。altemative として,aka-i hidokei は 2-way ambiguous であるとする立場が可能である。 この分析の長所としては:
(3) 伝統国文法が示す形容詞の2用法,終止形及び連体形が存在するという見解と相反しない。
(4) RC Analysis と SNP Analysis の strong points を採用している。
(a) RC Analysis
(i) [S 花びらが赤い] 花/ [S 海の色が美しい] 島/ [S 今 赤い] 花(はどれだ)
(ii) もし“赤かった花”が [NP [S 赤かった] [NP花]] 'the flower that was red' と分析されるならば“赤い花”も同様に [NP [S 赤い] [NP花]] 'the flower that is red' と分析されるべきである。
(b) SNP Analysis
(i) -i 接尾辞は,形容詞連体形の古い形 -ki(“無時制”)の k が消失したものである。
(ii) 古き良き時代/高い美しい山
(iii) “宗石が赤いてんとう虫を食べちゃったのような類例で,もし“赤いてんとう虫”が simple NP でなく embedded S であるとしたら,“食べちゃった”の past tense と embedded S の present tese との間に "tense clash&qout; が生じるはずであり unacceptable な文になってしまうであろう。
柴谷 (1978),神尾 (1983) の分析は,基本的に RC Analysis に基づくものであるが次のような難点がある:
(5) (i) カクテルが ≠ カクテル
(ii) embedded S における形容詞終止形を変形操作で連体形に変化してしまうことに無理がある。
(iii) なぜ,NP → (DET) - (AP) - N を設定しないのか? 設定すれば,変形規則も不要になり全体として simple になる。
alternative analysis として Brame (1984, 1985) の提唱する Recursive Categorical Syntax の理論を導入し,solution として形容詞終止形及び連体形に相当する lexical items を設定して分析を進めることが望ましい。