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象形文字ルウィ語の人称代名詞奪格形について

大城 光正

印欧アナトリア諸語に含まれる象形文字ルウィ語の人称代名詞の自立形は,以下の諸形が確認されている:

  1. 単. amu (主.与), mu(主.与.対)
  2. 単. ti(主), tu (対)
  1. 複. á-ZU-za (*anzanz) (主)
  2. 複. u一ZU-za (*unzanz) (主),u-ZU-sa (*unzas) (主)
(アナトリア諸語の3人称形は指示代名詞 *apa- “それ”と同形)
今回の発表では,更に2人称単数と2人称複数の奪格形を指摘する。
(1) tuwati
この語形は Assur 出土の鉛製の書簡 f にのみ認められる。従来,同語形は所有代名詞の奪格形と見倣されてきたが,文脈の分析によって,人称代名詞の自立形の奪格形で,ヒッタイト語の tuēdaz (a) に対応するものと考えられる。すなわち,同語形は印欧語幹 (*t(o)we-) の継承形 tu(wa)- にルウィ語の奪格語尾 -(a)ti が付加したもので,同形成はヒッタイト語の tu-k,tu-ēl,tu-ēdaz (a) と同様の形成を髣髴させる。
(2) u(n)zati
Assur 書簡 a には,u(n)zati(ルウィ語では子音直前の -n- は無表記)の語形が2箇所で認められる。従来,この形も所有代名詞の奪格形と見倣されてきたが,tuwati の場合と同様に,人称代名詞の自立形の奪格形と考えられ,ヒッタイト語の šumēdaz に対応するものである。同語形は2人称複数の語幹 unza- (< *unse- < *umse- < *usme-) に奪格語尾 -(a)ti が付加した形である。

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