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日本語と韓国語の第三者に対する敬語用法の比較対照

荻野 綱男
金 東悛
梅田 博之
羅 聖淑
盧 顕松
福田 麻子

我々は,日本と韓国の大学生を対象に敬語用法の比較対照を目的とするアンケート調査を行なった。日本側は東京近辺の大学生173人,韓国側はソウル近辺の大学生271人を調査した。調査では,大学生が日常接する人物(被調査者自身・父親・大学の学長・先生・上級生・同級生)を想定し,ある人物が別の人物に本をあげたということをどのように表現するか,聞き手が先生の場合と,親しい友人である場合とを分けてたずねた。また,一部の敬語意識についてもたずねた。
結果の分析から日本と韓国で敬語の使い分けの基準が違っていることがわかった。
(1) 日本は,第三者に対する敬語の使い方を決める際に,聞き手に配慮する面が非常に大きい。すなわち,第三者敬語の本来のありかたから考えると,その性格が弱まり,聞き手に対する待遇を表わすようになりつつある。また,その意味で,日本語の第三者敬語は相対敬語である。
(2) 韓国は,第三者敬語の性格がつよく保持されており,絶対敬語的な性格が強い。ただし一部に相対敬語的な面が見られる。
(3) 韓国は父親に対して敬語を使い,高く待遇するが,日本は身内として低く待遇する。これは絶対敬語・相対敬語の違いではなく,単に文化の違いである。
(4) 日本語はいわゆる授受動詞が存在し,その使い分けが敬語の使い分けに複雑にからんでいるが,韓国語にはそのようなものがないので,体系がシンプルである。ただし,韓国では主格助詞・与格助詞についても敬語形と非敬語形の使い分けが見られる。
(5) 自分で日記に書くような場合でも,韓国語では第三者に対する敬語使用規則が厳密に守られているが,日本語では,そのような場合には敬語が使われることが少ない。

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