次に見るような英語の能動受動文においてその主動詞として現れることのできる動詞とは,一体どのようなものなのかという問題を検討した。
(1) This dog food cuts and chews like meat.
その結果,次のような結論を得た。
(A) (i) 行為の成立が動作主格,影響格両者に依るもの。
(ii) 対象に対する直接的関与既の高い動詞で,とりわけ身体器官による処理操作という概念を含むもの。
(B) (i) 対象の「本来的資質」だけを述べない。
(ii) 「対比」,「強調]などを表す。
(iii) 慣習的知識に訴える。
この内,(A) は understand と cut などを区別するための語彙的な制約であり,(B) は語月論的なマキシム,あるいは文脈上の補助手段で,情報量を増やして対象の特徴づけを成功に導こうとするためのものである。
(A), (B) はいずれも次に挙げる許容性の基準を実質的に満足させるものである。
許容される能動受動文とは,影響格の名詞句が述部の表す動作の成否を左右するような『内在的資質』を特つ場合に限られる。