語用論から見た英語の従属接続詞について
川瀬 尚樹
言語表現をその使用者である話者の認識や信念の観点から語用論的に説明することができる英語の現象の中からいくつかを選び,話者の知覚だけに基づく「主観的な判断」を表す場合と話者以外の外的な情報や前提に基づく「客観的な判断」を表す場合を区別することによって統一的に説明することができることをまず示した。
そして,理由を表す従属接続詞の because と since の以下に見られるような相違もこのような語用論的な考え方を適用することによって説明できることを明らかにした。
- a. It was because/*since I didn't recognize Mark in his Mickey Mouse costume that I didn't say hello to him.
b. Did Mike leave Vegas because/*since he ran out of money ?
- a. Since/*Because you're an expert on antique paperclips, what do you think of my collection ?
b. Since/ ? ? Because my arms are full of packages, open the door.
because- 節は,生節における話者の断定的態度に対する主観的な動機づけを与えるものでまさに主観的な判断を表すのに対して,since- 節はどのような条件のもとで主節の内容が真実であるかを示し,話者が発話の前提として考えていることを示すもので,客観的判断を表すものである。話者が何らかの事態を前提にしているということは,それ以外の可能性はある意味で排除されている状況が考えられ,(1) のように新情報が要求され,理由の選択にいくつかの可能性があることが示される状況では since は用いることができないのである。逆に,(2) のように,ある前提に基づいて発話がなされていることが示される状況では because ではなくて since が適切になる。