トンガ語の動詞アクセントについて

湯川 恭敏

ザンビアの公用語の一つとなっているトンガ語 (Citonga) の動詞のアクセントについては,Hazel Carter が1962年の著書で詳細なデータを公表して以来,専らそのデータに依拠して,A. E. Meeussen, Carter 本人,James D. McCaweley, John Goldsmith らによってさまざまな解釈が試みられてきた。この発表は,1984~5年の独自の調査にもとづいたトンガ語研究の一部である。
トンガ語の動詞は,アクセントの面で2つの型に分類される。不定形で示せば,kútamba 「まねく」,kulanga 「見る」の如くである。「彼(女)を」,「彼(女)らを」といった意味の対格接辞があらわれると,kúmútamba, kúbatamba; kumulanga, kúbalanga となる。 mu のようなアクセント特徴を有する対格接辞(単数1~3人称)を O1, ba のようなそれ(その他)を O2 であらわすと,kútamba 等(A型)の不定形は,kúX, kúÓ1X, kúO2X で,kulanga 等(B型)のそれは kuX,kuO1X, kúO2X でアクセント表示されることになる(X は任意の音素列)。こうしたアクセントは次のような仮定によって説明されうる。
a) A型 Stem + a (tamba の部分)は X をアクセントとし,その直前の可変のもの(または,その列。以下同じ)を高くする。
b) ku は低いが可変。
c) O1 は低いが可変。
d) O2 は低く,その直前の可変のものを高くする。
e) B 型 stem + a(langa の部分)は X をアクセントとする。
否定の不定形は,kútatamba, kútamútamba, kútabatamba; kútalanga, kútamulanga, kútabalanga,であり,これは,次の仮定をつけ加えることで説明できる。
f) ta は低く,その直前の可変のものを高くする。
このような方法で,さらに直説法の主要な形を提示しつつそれらのアクセントの説明を考えたのがこの研究発表である。