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促音における舌と口蓋の接触パタン

吉岡 博英

[目的]日本語はヨーロッパ諸語と異なり,子音が連続して現れることは少なく,また開音節で終わることが多いため,本来の重子音は,ごく僅かである。その反面,日本語固有のものとして,母音の無声化やその脱落などと関連して,子音の促音化という現象が見られる。通常,音韻論的立場からはモーラ音素 /Q/ を立てて解釈される。この促音は,音声学的には重音として記述されることが多い。本研究では,この日本語特有の促音が産生される際の構音動態につき,とくに,舌―口蓋の接触パタンの経時的変化の様子に注目して調べた。
[方法]東京方言,あるいは関西方言を話す成人話者各2名計4名を被験者として,語中に破裂音 /t/,あるいは摩擦音 /s/ が促音として出現する有意味語を発語した際のエレクトロパラトグラムの経時的変化の様子に注目し,とくに,単音としてそれらの子音が現れた際のパラトグラムとの比較検討を行なった。
[結果]通常,破裂音が促音となった時には,単音の場合に比べ,舌―口蓋の接触パタンは,時間が単に延長されるばかりではなく,接触面はその間,口蓋の後方にもやや拡がる傾向を示し,単音の時より明らかに広い最大接触面積パタンを迎えた後,再びその接触面が徐々に減じていくことが知られた。なおその際の接触面の増加,減少の速度そのものはほぼ同じであった。一方,摩擦音では,単音,促音ともに,ほぼ同じ速度で接触面が拡がるものの,促音の場合でも,最大接触面のパタンならびにその面積は,単音の場合と,ほぼ正確に一致していた。言い換えれば,摩擦音での促音の舌―口蓋の接触パタンは,単音の場合の最大接触面に到連した段階で静止することとなる。そして,その状態を保ったまま,単に時間のみが延長されて促音として発話されていることが知られた。

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