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幼児と脳梁損傷患者にみるリズムの左右非対称性

河野 守夫
柏木 あさ子
柏木 敏宏

[実験1] 脳梁幹全長にわたって梗塞のみられる被験者に,inter-beat intervals がおのおの 250,500,1000 msec. のメトロノームの音にあわせて table tapping を行わせ,横河電磁オシログラフで測定した。結果は右手によるリズム表出は健常者のそれと大差はないが,左手の動きはモデルのリズムとは大きく離れ,不整脈となり,この傾向は intervals が大きくなるほど顕著となり,健常者のそれとの間に大きな統計的有意差が検出された。ところが250msec. のリズムヘの同期作業は健常者の S. D. より高いものの,分散は時に統計的有意差が検出されないこともある程度のものであった。 一方,1:4 から9才児に同じ作業を課したところ,年齢が低くなるほど,彼等の両手の tapping は,脳梁損傷者の左手の tapping と酷似していた。
[実験2] 脳梁損傷者の左手と3才児以下の幼児は所与のテンポをごく大まかに察知して手を動かすことができるが,同期させることはできない。実験者の方で target tempos をいろいろと変えて同期できるリズムをさがすと280-290msec. 台にそれを見出すことができた。
[実験3] 10:7, 1:2 の2人の幼児の普通の状態での tapping を,手に音の出るおもちゃを持たせて測定し,同時に彼等の babbling の interstress intervals を測ったところ,脳梁損傷者の左手の free tapping と酷似していた。また,これらは成人の tapping や音読のリズムに比し明かに速く,両者間に p < 0.005 の有意差が検出された。
[結論] 1) 脳の機能の lateralization が十分に確立される前の幼児のリズムは多分に右脳的である可能性がある。2) 幼児と脳梁離断者の左手のリズムは速い。3) それらはモデルのリズムのテンポを大まかにとらえることができても,同期させることはできない。同期はおそらく左脳の作業であろう。

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