サモア語の数詞について

塩谷 亨

サモア語の数詞の用法を分析し,それを大きく三つにまとめた。 1) 定冠詞+数詞(序列,特定のものの個数),2) 不定冠詞+数詞(不特定のものの個数)(何れも名目的用法),3) 時制マーカー+数詞(叙述的用法)。
数詞の限定的用法には二つの型があるが,それぞれ次のように分析した。
(1)Saoufaitauinatusie tolu.
PASTIreadbookPRESthree
関係節
「私は三冊(であるところ)の本を読んだ。」
(2)Etolutusisaoufaitauina.
PRESthreebookPASTIread
関係節
「私が読んだ本は三冊だ。」
(実際は,両者は,ほぼ同意で使われる。)
従来の解釈では小詞 "e" は単なる現在時制のマーカーとしてよりむしろ,数量表現特有のものと考えられ,(1)の "tusi e tolu" と(2)の "E tolu tusi" は「三(冊)の本」という名詞句とみなされた。その結果,上の二つの例に関して,名詞句が文頭と文中で語順を変えるということ,文頭にいきなり名詞句がくること(例2)から,サモア語においては実に特異な構造として解釈されることになる。今回行った関係節としての解釈によれば,これらの構造は,全く一般的なサモア語の構造の枠内で説明されると共に,3)の叙述的用法と一本化される。
更に,数詞と他の品詞の分布について比較を試みた。
冠詞との共起時制マーカーとの共起名詞の直接限定
数 詞×
nofo (住む)×
lele (飛ぶ)
malosi (強い)
talo (タロイモ)××
このように,数詞は,"nofo" (住む)などの動詞と共に一つのグループを成している。このグループは名詞の直接限定ができないので,関係節化して名詞を限定する。