本研究の目的は,異文化間コミュニケーションにおけるギャップの重大な要因となる非言語伝達が,日本と台湾という二文化でどう行われているか,計量的な手法により,その実態を顕在化し,二文化間の相違・共通点を明らかにすることである。非言語伝達を小説や映画等から抜き出すのでなく,実際に人々に働きかけ,実態を知ろうというものだ。
方法として,文献調査・聞き取り調査・作文調査・直接,台湾を観察する等を経,日本・台湾同等となるよう考慮したアンケート調査を実施した。東京と台北の大学生それぞれ404名,655名から調査票を回収,データは全てコンピュータに入力し,言語分析用プログラム GLAPS および GIGO を用いて,各種計算を行い分析した。
発表では,「挨拶場面における動作」「視線」(kinesics)「空間配置」(proxemics)の項目を取り上げ,日本・台湾の実態を顕在化した。 以下は,比較した結果である。
共通点:空間配置(人とテーブルに着席する時)の,ほとんどの状況下での席の取り方。
相違点:今回の結果からは,共通点より多く見出された。まず kinesies, proxemics の双方において,日本の方が定型性が強く,台湾で弱いことが,日台の大きな相違である。これを反映するものとして,(1) 日本に典型的動作(おじぎ)があり,台湾には見られないこと。(2) 接触行動の種類が日本に少なく,台湾に多いこと。その他の相違は,台湾の人の方が動作を多く行い,接触行動も多いこと。視線に関し,合湾では「見る」ことが定着しているのに対し,日本は,従来と同様「見たり見なかったり」する人が多いが,若者層には「必ず見る」人がかなりいることである。