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一般化と部分と全体

原口 庄輔

言語学において一般化を求める場合,規則の一般化,原則の一般化,概念の一般化の三つに分けて考えることができる。このことを例をあげながら論じ,一般化を求めるには,部分にとらわれていてはならず,常に全体への配慮が必要である旨の指摘を行った。
次いで,ブーツストラップ・モデルにおいてハドロンという粒子は「他の粒子の生成に力を貸し,生成された粒子はもとの粒子を生成する,」という性質をもつとされているが,それとほぼパラレルな性質が,言語においても,言語の習得と語形成において見られることを論じ,基底部のシステムと語彙部門のシステムの違いについて簡単に触れた。
部彙部門のシステムとしては,これまで様々な提案がなされてきた。そのうちで,最も組織的なものの代表として,Selkirk (1982) の提案を取り上げ,簡単に概観した後,その分析を批判的に検討し,その問題点を明らかにした。
次に,それらの問題点を克服する枠組を求め,語彙部門の普遍原則として付加 (Adjunction) を導入すべきであるという提案を行った。 このような枠組においては,(i) セム語などの自律分節形態論の連結 (Association) との類似点と相違点が明確になること,(ii) 実際には存在しないような語彙構造を自動的に排除することができること,(iii) 派生語も複合語も同一の原則によって処理することができること,(iv) *[V V]V や *[V A]A のような複合語が英語には存在しないことは,例えば,*[+V, -N][+V] のような複合語を排除する出力条件のごときものを設定すれば説明可能になること,(V) 浸透 (Percolation) の規定を簡単にすることができること,などについて論じた。
最後に語形成にかかわっている付加とか連結という原則は普遍文法に属すべきものであるから,個別文法の語彙部門のシステムは,その分だけ簡単になる旨の指摘を行った。

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