現代トルコ語の object-incorporation について

栗林 裕

対格言語である現代トルコ語では,Accusative マーキングされない場合として object-incorporation (OI) といわれる,DO が V と不分離な complement を形成する場合が考えられる。 OI のサンプルを lexicalization の度合によりAとBのグループに別けて統語的変形テストを加えた結果を次に示した。
e. g. Adjective Addition Test
A グループMuratilginčdersčalɨš-ɨyor.
ムラトおもしろい授業勉強している
(ムラトはおもしろい(格好で)勉強している)
B グループ*Muratšiddetligünahčɨkar-ɨyor.
ムラトきびしい引き出し ている


  1. グループAB
    操作
    Permutation××
    Pronominalization××
    Extraction××
    AdditionAdv××
    Adj×
    Insertion×
  2. (マーキングのある場合)
  3. グループAB
    操作
    Permutation××
    Pronominalization××
    Extraction○ (indef marker)×
    AdditionAdj○ (ACC)○ (3sg+ACC)
    Adv○ (indef marker)○ (3sg+ACC)
    Insertion○ (ACC)? (3sg+ACC)
図 a より OI には様々な結合段階が存在しているといえる。図 b のマーキングのある DO は literal な解釈をうける。マーキングは意味的語境界を表示し,変形の適用可能性はマーキングに依存する。 また compound の構成素は全く統語的変形を許さず,one word として機能していることから OI とは区別される。
e.g.baš-vur-mak(申し込む)da insertion*baš-da-vurmak
頭打つこと
compound と OI の関係は次の様になる。