日本語/English
日本言語学会について
入会・各種手続き等
学会誌『言語研究』
研究大会について
学会の諸活動
その他関連情報

構成素構造と主題構造

小野 尚之

(1), (2) はいわゆる SVOC の構文で,補語 C にあたる要素が,動詞が目的語に与えた影響の結果生じた状態を表わす点て共通している。
(1) John shot the guard dead.
(2) He slept himself sober.
以下の議論ではこれらを Resultative Sentences と呼び,その構成素構造と主題構造の関連を考察する。
GB 理論の枠組では,Stowell (1983) がこの構文に Small Clause としての分析を与えているが,彼の,Small Clause は指示性を欠くという主張,及び Small Clause の句構造の問題点を指摘し,この分析を排除する。
代案として,以下に示す Projection Principle に基づいた分析を示す。
Projection Principle : Every constituent structure of S is a projection of its thematic structure.
Thematic Structure は動詞の持つ AGENT, THEME, GOAL などの thematic role を表示し,それぞれが,subcategorization frame の統語範疇に投射される。いくつかの統語的テストの結果,(1), (2) の文は NP - [V - NP - AP]VP という構成素構造を成していることが分るので,それぞれの構成素がどのような thematic role からの投射であるかを明示することによって意味関係が表わせる。補語にあたる要素は,動詞の項として GOAL を持つ。 GOAL は典型的には前置詞句として表示されるが,John gave the book to Mary / John gave the book away, John got to Philadelphia / John got angry の例で示されるように他の統語範疇で表わされることもある。 また John shot the guard to death のように to があらわれることから GOAL であることが分る。従って,(AGENT, THEME, GOAL) という構造でこの文の持つ使役の意味が表わせると考える。(2) の例では,自動詞が目的語をとるが,これは我々の分析では,GOAL が THEME を要求するので,余剰規則として予想可能になる。従って,(1), (2) の構文に妥当な分析を与えうる。

プリンタ用画面

このページの先頭へ