英語不定詞関係節構文の一側面

坪井 栄治郎

英語には,通常の不定詞関係節構文と外見上同じでありながら,不定詞の機能が異なる,hard nuts 構文と呼ばれるものがある:
John is a hard man for me to get along with.
John is an odd person for him to confide in.
hard nuts においては,不定詞は名詞を修飾しているのではなく,名詞の前の形容詞にかかっているので,普通の不定詞関係節構文と同じに扱うと,不適切な意味解釈が得られてしまうという問題がある。
そこでこれまでに,hard nuts の不定詞は深層構造で形容詞の補文であったものが外置されたものである,とする分析が提案されていたが,幾つか難点があり,無理と思われる。
そこで hard nuts は,an easy book という表現の場合には "Books are (for us) to read." という pragmatic knowledge によって埋められている,形容詞の open complement を,不定詞で埋めて解釈されているものと考えて,普通の不定詞関係節構文と同じに生成し,意味解釈で不定詞と形容詞が結びつけられるものと考える:
このように考える事によって,外置分析の難点が解泊されるだけでなく,正しい構成素構造を与え,外置分析では説明不能な事実をも処理可能となる。
また,このアプローチでは,NP 内にない不定詞と形容詞が結びつけられるのを防ぐ必要があるが,同様の不連続構成素関係を有する,名詞とその外置関係節(補文)を支配する原則を一般化する事によって,ad hoc な制限なしでも,不適切な結びつけを防ぐ事が可能であると考えうる。