2022年度の論文賞(1件)
井戸 美里 氏(共著者:窪田 悠介 氏)
Misato IDO, and Yusuke KUBOTA, "The Hidden Side of Exclusive Focus Particles: An Analysis of dake and sika in Japanese",『言語研究』160号, pp.183-213,(2021年9月)[
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本論文は,日本語の「ダケ」と「シカ」の違いについて記述的データをふまえて分析した形式意味論研究である。従来,この二つの取り立て詞は主陳述と第二陳述の違いで説明されるとされたが,これらの概念が曖昧であった。本論文では効果的に最大値演算子を援用することで「主陳述」と「第二陳述」に理論的な説明を与えており,新しくかつ堅牢な分析を提案している。直感的にも納得の行く手順で丁寧に分析を進めている点が高く評価された。「ダケ」に比べて「シカ」についての説明に若干の不十分さが認められるものの,関連する事象にも言及しており,言語一般の焦点形式の意味論的研究にも貢献しうる内容である。以上により,日本言語学会論文賞授賞論文にふさわしいと判断する。
[授賞式(第165回大会,11/13,オンライン)]