タイ語とマレー語のクラシファイヤーについて
綾部 裕子
タイ語とマレー語は系統的には直接関係がないが,数多くの類別詞を用いる点では共通している。この二言語における類別詞の用法を対照言語学的に検討し,単独に考察していては分らない特徴を把握しようと努めた。結果は次のとおりである。
- 類別詞の値段と定義: タイ語は,名詞+基数詞+類別詞 (e. g. mɛɛw sɔɔ̌ŋ tua 《猫・二・匹》) で,特定の類別詞がなければその単語自身を類別詞とする。マレー語は主として,基数詞+類別詞+名詞 (e. g. dua ekor kucing 《二・匹・猫》),類別詞が無ければ,基数詞+名詞となる。マレー語の場合は数詞が1の場合に se――+名詞という環境に入るものを類別詞と定義できる(satu《1》の tu は類別詞であるという指摘を発表時にいただいた)が,タイ語の場合は類別詞の定義はかなりあいまいで,将来検討を要する。独立類別詞(時間,度量衡,金銭などの単位)の場合は両言語の用法,位置に差はない。
- タイ語とマレー語の類別詞の間には,単語のレベルで同一,あるいは非常に類似した形式はない。
- 両方の言語に,習慣上数えないので数詞と統合せず,従って類別詞も取らない単語がある(e. g. 膝,額,垢)が,uncountable noun の範囲はマレー語の方が広い。例えば,火,風,神などはタイ語では数えられ,マレー語では数えられない。
- 両言語とも,対をなしているもの(e. g. あし,目,耳)は必らず対で数える。対のものが一つの場合は〝片方〟という。
- マレー語の類別詞は物質の世界を大,中,小の丸いもの,および平たいもの,細長いものに大らかに分類しているが,タイ語の類別詞はより個別的で,形状のみから学習者が推測するのが困難である。
- マレー語の方に,動詞に由来する類別詞がタイ語より多い。