日本語東京方言複合名詞のアクセント

立石 浩一

以下の様な語・音列のアクセント=パターンには共通点がある。
(1) 外来語
a. ラス
b. ーリー
c. ード
(2) 意味の無い音列
a. エオ
b. タナラワ
これらの新語や無意味な音列は「少くとも後から2モーラが低音調を持ち,3モーラ目が低くなるのはそれが長い音節の後半部の時のみである。」という共通の特質を持つ。 また,同じ特質を,McCawley (1968) の言う「長い」要素を主要部として持つ複合名詞のほぼ全て,及び「短い」要素を主要部として持つ複合名詞の多くのものが持っている。
(3) a. コロ
b. タマ
c. イガイウソウ
d. ンドウタイプイター
(4) a. ーキーエキ
b. ウタ
c. ボシ
この現象を単なる偶然としてとらえることはできない。これを,非線型的音韻論の枠組で何らかの原理・原則により自然に導かれるものとするなら,言語習得の負担を軽くすることが出来る上に,複合名詞のアクセント規則を無標化という自然な過程として捉えられる。