ガリシア語の人称不定詞について

浅香 武和

ガリシア語は,イベリア半島北西部を中心に使用されているロマン諸語の一つである。
ガリシア語が他のロマン諸語と区別される特徴の一つに,人称変化する不定詞が存在することである。この不定詞は,一般に「人称不定詞」とよばれ,主語にあわせた人称語尾をもつ。人称不定詞の起源は異説かおるが,すでに13世紀初頭に現われる。
筆者は,人称不定詞の用法を統辞論の面から14種類に細別する。
1 状況補語 2 主語 3 実詞補語 4 形容詞補語 5 直接補語 6 叙述補語
7 前置詞付補語 8 名詞的補語 9 同格補語 10 帰結補語 11 現在分詞に等価
12 比較語による 13 助動詞に依存 14 その他(疑問,感嘆文)
この分析から,状況補語として人称不定詞が現われる例をあげる。
Mais ao noso xuício até agora non se deron os pasos necesários para avanzarmos no desenvolvimento do esquema industrial que desexamos.
(A NOSA TERRA, N0. 246)
「しかし私たちの判断では,今日まで私たちが望んでいる工業体系の発展に前進するための心要な事業は起らなかった。」
人称不定詞は,前置詞をともなって状況補語のはたらきをする場合が多いことが理解される。A NOSA TERRA (Periódico Galego Semanal) vigo, NO. 8. NO. 240-250 (1978, 3. 17. 1984. 2. 22 - 7.5) では48例のうち35例 (72.9%),Lingua e cultura Galiza. E. X. B. Cido Superior, A Coruña. 1982, 477pp では107例のうち82例 (76.6%) である。

参考文献