本研究の意義は,談話展開行動の研究として初めて計画的な多人数調査(老年層・中年層・若年層・幼年層の男女各5名,総計40名)を実施し,(1) 世代による属性的観点,(2) 談話のテーマの観点,(3) 地域志向性(東京志向性・関西志向性)等の観点による社会言語学的分析を行い,(4) その変容の要因を推定した点にある.本研究で得られた新知見は次の通りである.(1) 属性的には,老年層・中年層が「主観直情型」の東京型,若年層・幼年層が「客観説明累加型」の関西型である.即ち世代差が認められたのである.(2) 談話のテーマは談話展開それ自体のパターンに影響しない.(3) 全世代にわたって関西志向性が高く,志向性の観点のみでは世代的変容を説明できない.(4) 若年層・幼年層の「関西型」談話展開は,元々関西志向性が高い土壌に,言語形成期におけるマスメディアを通しての日常的な関西弁への接触という要因がかけ合わされた結果生じたものと解釈できるのである.