オリヤ語の関係代名詞は,それとその相関代名詞とが同一の節に現れる構文(以下,単文構文と呼ぶ)を作ることができる.これは,関係節構文,つまり関係代名詞とその相関代名詞が別々の節に表われる構文,とは別個の構文である.本発表は,単文構文の用法について,話者間で,容認可能な文の範囲が,全くの不可能から特段の制限なしまで,相違する様子を報告する.そして,この観察にもとづき通時的な発展を再建する: この用法は,まず,関係節構文のある種のものが単文に再分析されて成立した; そののち,二つの文型を典型としてその周囲に向かって実現できる文の種類の範囲を広げていきつつある.上述の再分析がほかの多くの言語で起こらないことと,上述の二つの文典型がオリヤ語の単文構文に見られることは,関係代名詞の機能 ―同一指示対象の二つの場面における異なる見え方を対照する― が文表現上に実現することからの自然な帰結だ,と論ずる.