秋田県男鹿方言では,第1モーラと第2モーラはその高さを違えねばならない.ところが,以下のような場合に例外となる.イ) CVn-,ロ) 長母音を含む CVV に由来するもの,ハ) 複母音 Ca'e,ニ) 無核の1モーラ語.
以上のように,第1音節が何らかの形で「長い」ことが,アクセントのありように影響していると考えられる.ただし,ロでは実際には母音は「長く」はない(基底においては「長さ」を認めることもできよう).結局,男鹿方言には母音の長短の別は「ない」と発表者はこれまで考えてきたのであるが,第1音節には以上述べたような形で「長さ」があることがわかった.
上記4つの場合においては第1モーラと第2モーラの高さが同じであってもよくなり,その際「第1,第2モーラともに低い」ないし「ともに高い」という自由変異を生ずる.