現代アイスランド語の "John kissed Mary on the cheek" タイプの構文
入江 浩司(東京大大学院)
現代アイスランド語における Jón barði Egil í höfuðið 'John: NOM beat: 3 sg Egil: ACC in the: head: ACC' 等の,目的語が動作の対象全体を表し,実際に動作を受ける部分がさらに前置詞句で特定されるという構造(「主語+動詞+全体名詞+前置詞+部分名詞」と定式化する)をもつ文を扱った.全体名詞の格形(対格で現れる動詞と与格で現れる動詞がある)と,同じ動詞が意味的に関連した他の構文で使えるかどうかに基づいて,表題の構文が可能な動詞の分類を提案した.[前置詞+部分名詞]という要素の現れ方には,í 'in' + ACC, á 'on' + ACC, á + DAT, um 'over' + ACC という4つのパターンがある.その選択は自由ではなく,動作を受ける部分の広さと動作の瞬間性という点で,動詞の意味と密接に関連しており,その傾向が先の動詞の分類とも相関していることを指摘した.部分名詞としては,感覚のある身体部分が最も適切であることも述べた.