オリヤ語の関係代名詞と再帰代名詞の意味と照応上のふるまい

山部 順治(日本学術振興会特別研究員)

オリヤ語について,関係代名詞で表される照応関係と,再帰代名詞で表される照応関係には,それぞれに固有の意味があって,それら意味が両表現の文構造上の分布を条件づけていると論ずる.前者は,2つの場合における異なった見え方の指示対象が同一の指示対象であることを表す.後者は,再帰代名詞の指示対象が先行詞の指示対象の個人的な領域にあることを表す.オリヤ語では,関係代名詞と主名詞の対は,同一の節に現れることができ,したがって再帰代名詞と先行詞の対と分布が重なる場合がある.その場合にも両照応表現は,それぞれ固有の意味により同一指示の違うとらえ方を表している.オリヤ語での観察から,類型的には,再帰代名詞と先行詞が典型的には同じ節に現れるのと対照的に,関係代名詞と主名詞が典型的には別々の節に現れると述べるべきであることが分かった.これらの分布は,上述の両者の意味が文構造上に実現するしやすさに対応すると述べた.