現代シンガポール英語の文末詞に見るトーンと語用論的機能

大原 始子(梅花女子大)

シンガポール英語(以下 SE とする)のクレオール的特徴の一つと言われる文末詞を取り上げ,現代 SE における機能の分析を試みた.'la' を例として,「中国南部方言」,「初期 SE」,「現代 SE」それぞれのトーンと語用論的機能を検討した.「初期 SE」の文末詞 'la' は,「中国南部方言」語気詞の高平調,低平調と同じトーンで使用され,ほぼ同様の語用論的機能を果たしているが,「現代 SE」の 'la' 使用時には,上昇調,下降調イントネーションが観察された.

本研究では,「半疑問イントネーション」にも似た上昇調に注目し,'la' が「半疑問イントネーション」で文の伝達に関わっていることは,中国南部方言の語用論的機能をすでに消失し,現代 SE としての機能を備えたとした.現代 SE が文末で相手への働き掛けが大きい声の上昇を必要とした理由,持つことによる効果,'la' が担うに至る経過を社会言語学的に考察した.