身体部分名称の比較からみた日本語とオーストロネシア語族オセアニア諸派との親近性について
大西 耕二(新潟大)
日本・琉球語 (JR) の身体部分関連語(非漢語)を,Comparative Austronesian Dictionary (Tryon, 1995) の中のAustronesian (AN) の80言語語彙と詳細比較し,Eurasia 諸語や Niger-Kordofanian (NK) とも比べた.非 JR 言語に反映(reflex =同祖語)が見出された JR 語彙項目は133で,その内の,AN に反映を持つ129項目に関する音韻的最酷似型が AN 内でどのように分布するかを,最酷似型出現頻度を表わす closest similarity score を用いて解析した.133の内,91.0項目は Oceanic(OC; 49言語を含む)に最酷似し,OC 内の Western OC(15言語)と38.4項目[Meso-Melanesian (MML): Roviana =6.0項目,Maringe =5.0; North New Guinea: Yabem =5.01, New Caledonian (NC) と24.1項目 [Xaracuu=8.5, Cemuhi=8.0] の最酷似を示した.非 AN 言語との最酷似は極く少数.Proto-JR は proto-NC や MML に近い OC の一言語に起源した.JR と AN, OC, NK との語頭子韻の間に多くの音韻対応則が認められた.借用語はなかった.