本発表では以下にあげる「経験的間接関与文」を「ファンクター」の概念(外項を与えるが,それが実質的意味を持たないため意味役割を単独では与えられない)を用いて分析を試みた.
(1) 私は落雷で家を焼いた
(2) 田中さんは昨日の台風で屋根を飛ばした(天野 1995)
Ritter & Rosen (1993) での日本語の非対格動詞+「~させ」,及び間接受動態をつくる「~られ」がファンクター述語を形成するとの主張を受け,間接関与文が「音形のない」ファンクター述語「-RARE」を含む構文であることを主張した.それに加え日英ファンクター文で観察される主語と述部内補語との代名詞束縛制約(英語)と主語と目的語間での所有制約(日本語)が,経験的主語への意味役割付与から説明されることを論じ,その問題が言語間の差を越えた一般的原理に関わることを示唆した.