幼児の言語習得過程における音韻現象に関する一考察
―日韓バイリンガルの一幼児の事例を中心に―
Yoko Takasu (Sun Moon University)
本発表は,日韓同時バイリンガルである一幼児の言語習得過程における音韻上の諸現象を,音韻プロセス,二か国語間の干渉,及び幼児の言語習得過程における音節とモーラの役割という観点から分析,考察したものである.
満2歳前後(言語以前期~二語文期)までに現れた音韻プロセスは日韓で一致するものが多く見られた.注目すべきものとしては,重子音化,音節構造の同一化(鼻音の挿入)等がある.満2歳以降(多語文期)になると幼児が自分なりの音韻規則を構築しはじめる時期となり,それにともなって干渉現象も現れるようになった.また,前段階で見られた音節構造の同一化現象と共に,同一音節構造あるいは同一素性の連続からの逸脱と見られる現象が観察され,また単語の長さを維持しようとする現象も見られた.今回の分析から,幼児の言語習得過程において音節とともにモーラが重要な役割を持つことがある程度確認できた.