中国語におけるアスペクト役割と文中の位置の関係について

伊藤 さとみ(京都大大学院)

本発表は,現代中国語において (1) 場所表現,(2) 動作の量/回数表現,(3) 様態副詞,(4) 創造/消費される物などが動詞の後に現れる時のみアスペクト役割として機能し,前に現れると動作の行われる様態しか表さないという違いがあることを明らかにした.具体的には,それぞれの動詞の前/後の意味は (1) 動作の行われる場所/移動先,(2) 動作の達成に要した量,回数/動作自体の量,回数,(3) 動作の様態/結果の状態,(4) 動作の対象/動作の終点(完成,消滅した時)という違いがある.この主張を支持するものには,動詞の後に (1)~(4) の要素が二つ以上あると非文になるが,動詞の前後に分けてあれば容認される現象(1文に1終点の制約)や,動詞の前か後どちらかにのみ現われる副詞の意味特性が上記の主張する違いに符号していることが挙げられる.