2つのンデベレ語
―動詞アクセントを中心に―

湯川 恭敏(東京大)

約160年前にわかれ,南アフリカとジンバブエに話されている2つのンデベレ語 (isi-ndebele) の間の差異を,動詞アクセントに重点を置いて見ると,次のことが指摘される.

1) 南アフリカのンデベレ語では,本来高い音節の前で低い音節(列)が高くなる傾向があるが,ジンバブエのンデベレ語では,そういうことは直前が高い語幹冒頭音節のみにおこる.例: úkúcébísánisa vs. úkúcebisánisa 「相談させる」
2) 前者でもズールー語等に比して一部の動詞活用形アクセントが簡単化しているが,後者では,全体として南ンデベレ語よりも簡単化しているようである.ただし,後者には,ところどころ奇妙なアクセントが認められる.
3) 前者にも動詞自体のアクセントの型の区別があらわれない活用形があるが,この傾向は後者でやや強く,また,どちらの型に従って発音してもよい動詞があらわれている.