日本語には (1a) のような名詞句 (Truncated Relative Clause (TRC)) がよく見られる.TRC の特徴としては主要部と同じ指標を付与された空所 (gap) が補部内に存在せず,主要部と空所の依存関係をとらえるには (1b) のように補部内にある種の条件節を補わなければならないことが挙げられる.
(1a) 頭のよくなる本/ b.[[proi 読めば] 頭がよくなる] 本i
TRC は語用論の立場から論じられたものが多かったが,英語で (1a) にあたる表現 (2) が許されないことや,(1a) が (3) のようにはパラフレーズできないことから,統語論上の条件も必要であることを本発表で主張した.
(2) *the book which your head gets better
(3) ??読むなら頭がよくなる本
なお本研究は TRC の分析を通して,今までほとんどなされてこなかった日本語の条件節の統語論的分析に対しても重要な示唆を与えたと思われる.