現代アラビア語の“完了形”の否定には,否定辞 lam+“未完了形要求法”と,否定辞 mâ+“完了形”の2つの形が用いられ,同じ意味(時制・相)を表す.この2つの形式の後に,従属節 Hattâ (= 'until') +“完了形” (VP2) が続く場合,意味の違いが現れる.lam +“未完了形要求法” (VP1) を用いた型は,“not VP1 until VP2” と解釈される.一方,mâ+“完了形”の方は,"not~until..." のほかに,"as soon as VP1, VP2" と解釈されることがある.後者の解釈は,表される時間的関係の点でも肯定文である点でも,前者と異なるが,次の要因により生じる. (1) 意味的特徴(VP1 は +punctual (nondurative),VP2 は -resultative state)(2) 言語外的な知識(VP1→VP2 の因果関係の存在)(3) mâ の機能的/語用談的特徴(mâ は構成素否定なので,"not~(but...)" という contrastive focus 機能をもつ上,排除的な意味をもつ Hattâ と結びつくことにより,実現化(対応する肯定的事象)への語用論的含意が強くなる)