Caland's system とは印欧語の中でもとりわけギリシア語とインド・イラン諸派において組織的に保存された形容詞-名詞間の相関関係であり,IE *-ú-s,*-ró-s, *-nó-s に終わる形容詞は比較級で *-́yōs,最上級で *-́istos による形を持ち,複合語前分では *-i- による結合形をとり,*-́os~*-́es- による中性名詞とその派生形容詞 *-ḗs~*-és(-) と相関関係を持つという印欧語独特のシステムである.
ここでは,γλυκύσ「甘い」,εὐρύσ「広い」,πολύσ「多い」といった u-語幹形容詞における階梯の違いと結合形の *-i- の起源を自ら集めたホメーロスと抒情詩のデータによって検証してみた.