連濁規則は，語形成において，語彙部門，統語部門に亘って適用される語彙音韻規則の扱いを受け，複合形容詞においても例外ではない．しかし，語彙的複合形容詞・統語的複合形容詞のいずれにも，連濁が阻止されるものが存在する．連濁阻止規則として，複合形容詞に対して有力なのは，第２要素に有声阻害音が合まれる時と第１・第２要素が意味的に SV 関係にある時，というものであろう．連濁は単一の条件で有無が決定されるものではなく，音韻・統語・意味的要因が複合的に関与した言語現象である．複合語全般に適用できる連濁生起のメカニズムを今後は考えていく必要がある．