20世紀歌謡におけるリズムの変遷

田中 真一(大阪外国語大)

本研究では今世紀に作曲された歌謡901曲における,外来語に対する音符付与方法の分析を通して日本語のリズム変遷を論じた.年代とともに音符付与の方策に一定の変化が見られ,具体的には (1a) のように,1モーラ中の旋律移動が減少していること,さらに (1b) のように,音符の付与されるリズム単位が徐々に変化していることが明らかになった(μはモーラを表す).

図

特に (1b) の変化が音符付与の単位が従来の「モーラのみ」から「音節も許容」という移行を示しており,自然発話における移行と一致する.さらに,(1a,b) がともに「音符に対する情報量の総体的な増加」という変化に集約できること,従って,歌謡曲は旋律に余裕がなくなる方向に徐々に向かっていることを指摘した.