可能性判断を表す副詞について
―日西対照言語学的観点から―

和佐 敦子(大阪外国語大学)

本発表では,日本語とスペイン語の可能性判断を表す副詞の本質的意味を考察し,次の2点を主張した.
1. スペイン語の可能性判断を表す副詞 a lo mejor は,話し手の中に同時に複数の命題が想起した時に使われる副詞である.このように発話時に同時に想起してきた複数の命題に対し,話し手は一つの命題に対してのみ真偽判断を行う持続法を使用できない.一方,日本語の「ダロウ」も一つの命題に対してのみ真偽判断を行うムード形式であり,複数の命題成立の可能性を含意する「モシカスルト」などの可能性判断を表す副詞とはなじまない.
2. 可能性判断を表す副詞は,日本語でもスペイン語でも,発話時に同時に想起した互いに矛盾する命題または,複数の命題の中から,一つまたは二つを選びとって,その命題成立の可能性があると判断し,同時に他の命題成立の可能性をも含意することから,「命題間の範列的関係を表す」という意味機能を持つ.