ネワール語のテンスは,形態的に Past/Non-Past の区別を示し,アスペクト的には,eventive/stative という対立を示す.非 evidential な主語の場合,eventive と stative の間には,個別の事態成立・習慣の対立があり,ma- という否定の接頭辞が付いて表される両者の否定は,否定的事態の成立・事態の不成立という意味の対立がある.否定的事態の成立は,Talmy (1985) の言うところの one-way resettable 型の変化動詞(sekhã cāye 「風邪を引く」など)に限られ,syāye 「壊れる」などの one-way non-resettable 型の動詞ではそのような表現ができない.また,動作を表す動詞の場合は,ma- が付く形は,期待される事態の非成立を表す.Past の場合,事態の非成立は ma- 否定であらわされるが,Non-Past の事態の非成立は,Non-Past に makhu というコピュラの否定を使う.また,習慣は,3人称では頻度によって状態形か Non-Past かの対立がある.