フィンランド語の「他動詞+第3不定詞入格」構文

千葉 庄寿(東京大大学院)

フィンランド語の第3不定詞入格 (3InfIll) が他動詞を主動詞として現れる構文 (AC) について,(1) 主動詞の目的語 (Obj)の有生性,(2) 共起しうる 3InfIll の種類という2つのパラメータを用いて主動詞を3種類に分類し,AC の用法を体系的に記述することを試みた.

先行研究では,Obj が有生の場合の AC がもっぱら注目されている.しかし,実際には3割の用例に無生の Obj が現れる.さらに,有生の Obj をとりにくい主動詞(タイプC)が AC をとって現れる場合,不定詞の前置が可能になる一方,Obj の指示対象自身に変化をもたらすような行為を表す動詞は 3InfIll としてとることができないことが,用例の検証からわかった.

発表では,さらに,タイプC の他動詞から,AC にあって動詞の語彙的な意味が希薄になっている主動詞(タイプB)への,文法化の流れの中に AC をとる各動詞を位置付けられることを論じた.