発話行為としての日本語の依頼に関する実証的研究である.本研究ではファミレス等で2杯目以降が無料となるコーヒーのおかわりを頼む発話行為者の現実の発話を観察・記録する方法により,客(依頼者)は店員(被依頼者)にどんな言語表現形式を用いることで,その依頼の意図を伝え,他方相手への負担軽減を図ろうとするのかを調査,考察した.その結果,おかわりを頼んだコーヒーが確実に注がれることを重んじる「パフォーマンス重視型」(約30%)と,相手(店員)との人間関係に気を配る「コミュニケーション配慮型」(約70%)とに大別できた.また,「~お願いします.」「~ください.」等の使用者が全体の約半数を占めたが,高度な語用論的明晰性とサービス従事者としての店員の面子保持ゆえに,わかりやすさ,丁寧さ,客としての立場利用度という3要素のバランスが極めてよい言語表現形式だからだと考えられる.