日本語の「知る」に対応する動詞として,ポルトガル語には saber と conhecer とがある.本発表ではそれぞれの意味を記述し,また文法上での違いを検討した.それぞれの動詞は以下のごとくまとめられる:
saberは「ある事柄を知っている」ことを表わす.Conhecerに見られる「知る」手段の制約はない.また,「知らない」状態と「既に知ってしまった」状態しか表わしえない.従って,conhecer と異なって「知る」過程は問題にならない. saberは「ある事柄を知っている」ことを表わすことから,統語的に従属文をとることが多い.また,「あるものについての何らかの事柄を知っている」ことを表わす場合,前置詞を伴う形式をとる.さらに「ある対象そのもの自体における何らか(事柄)を知っている」ことを表わして,saber+目的語(名詞・名詞句)の形式で現われることもできる.
Conhecer は「あるものそのもの自体を知る」ことを表わし,かつ直接的体験を通して知ることを表わす.また「知る」過程をも表わしうる.
Conhecer+目的語(名詞・名詞句)の形式で現われるのが普通である.