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バスク語アスペイテイア方言の助動詞du/dituによる「非人称」について

吉田 浩美(東京大大学院)

バスク語アスペイティア方言には次のような形式がある.

(1) [△-ERG]NP [ABS]NP 動詞 助動詞 du/ditu
(2) [△-ERG]NP [△-ABS]NP 動詞 助動詞 du
(△はその格で表わされるNPが存在しないことを表わす.)

助動詞 du は,能格3人称単数の NP と絶対格3人称単数の NP があるときに,ditu は能格3人称単数のNPと絶対格3人称複数の NP があるときにもっとも普通に現われるもので,(1)(2) のような構造は例外的なものである.この形式に現われる動詞は,発表者が調査した500あまりの動詞のうち25あり,そのうち23までが気象・日照にかかわる自然現象について述べる表現の中に現われるものである.他の二つは ipiñi, jarr-i で,いずれも「記す,載せる」を表わす.

気象・日照にかかおる自然現象については,その現象そのものが述べられており,その過程は何らかの「行為者」と結び付けられているわけではない.ipiñi-i, jarr-i 「記す,載せる」については,現実には「記す,載せる」という行為を行なう「行為者」が存在するものの,1) 「行為者」を表わすいかなる NP も現われず,また想定もしにくい,2) 「記してある,載っている」という,その時点での状態を述べる場合にのみこの形式が使われ,未来や完了では言いにくい,ということから,「行為者」を考慮せずに「行為の結果の状態のみをクローズアップして述べる」ものであると言える.

(1)(2) は,「行為者」が存在しないか,あるいは考慮の外に置かれる「非人称」を表わすものであり,そこでは「現象・状態」のみが注目されている.

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