クワニャマ語 (oshikwányama) は,ナミビア北部に分布するオヴァンボ諸語の一つである.この言語の名詞のアクセントの特徴の一つは,孤立形を見ただけではアクセントが把握できない,という点にある,以下の表記では,- で接頭辞と語幹の境界を示す.
このように,孤立形ではまったく同じアクセントであらわれるが,これに形容詞 -wa「よい」をつけると,(1)と(2)(3)が区別される.
これらの名詞を動詞の主語の位置に置くと,(1)(2)と(3)が区別される.
これらの名詞を用いて「よい~が~した」という文をつくると,はじめて(1)(2)(3)が互いに区別されるアクセントであらわれる.
こうした奇妙な状態は,4にあらわれるアクセントを出発点と考え,次のようなことを仮定すると何とか説明がつく.
(a) こうした構造の名詞(+形容詞)がそれだけで発音されると,名詞の第3音節(語幹第一音節)が高くなる.
(b) 高い音節の直後の高い音節は低くなる.
本発表では,(1)(2)(3)に対応する3つのアクセントの型について,その特徴を記述するとともに,各型についてのアクセント変異を検討した.