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インドネシア語と日本語の関係節構造について

本田 謙介(獨協大大学院)

関係節と話題化構文とが統語論上関係があるということは,これまでいくつかの論文で指摘がなされてきた(Schachter (1973),久野 (1973) など).しかしそれらの関係が言語に普遍的に見られるかを研究している論文は少なく,また両構文を統語論上結び付けている分析は少ない.本研究ではまずインドネシア話のデータから両構文が密接にかかわっている場合があることを明らかにし,統語構造上,両構文を結び付けた.しかし同時に両構文が構造上関与していないと思われる例があることも明らかになった.つまりインドネシア語では2種類の関係節構造を仮定することになった.さらに「普遍性」の観点から日本語の関係節構造との比較を行なった.その結果いくつかの類似点と相違点が認められた.類似点としては,両言語とも関係節化において前(後)置詞を削除しなければならないことや,主語からの関係節化を許す(ように見える)例が見られることが挙げられた.相違点としては,インドネシア語は目的語の長距離話題化は許されないがそれに対応する関係節は許され,一方日本語はどちらも許されるという事実と,インドネシア話と日本語の関係節では主要部と補部との語順が異なることが挙げられた.類似点については両言語が類型論上「主語・主題卓越型言語」(cf. Li and Thompson (1976)) に属していることや,主語脱落言語に分類されることから説明した.相違点については,関係節に直接影響を及ぼしている話題化構文に付随する制約が言語間で異なっていることや,各言語の機能範疇が主要部パラメタに関する素性に関して異なった値を持っていることから説明した.

本研究によって関係節構文の一層深い理解が得られたのみならず,言語間の異同を的確に浮かび上がらせたことにより,今後新たな言語類型論的普遍性の発見につながるものと思われる.

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