(1)のような心理動詞にのみ許される逆行照応現象については,Belletti and Rizzi (1988) の“非対格助詞分析"が最も妥当な分析であると見なされてきたが,本発表では,この分析では説明できない事例を多くとりあげ,それが誤った言語事実に基づくものであることを指摘する.
代案として,英語の心理動詞は,日本語の場合と同様,使役動詞類に属し,英語の心理動詞にも音韻的に空の使役形態素 CAUSE が存在することを論証する.従って,英語の心理動詞は,拘束形態素(√ annoy と表記する)が空の使役形態素 CAUSE に素性照合のために動詞編入行うと想定する.具体的には,(1)は,(2)のような構造を持つと主張する.φは,空であることを示す.
LFのレベルで,MaryがNP2内のherselfをc統御しており,束縛原理Aを満たしている.故に,Transitivityにより,NP1内のherselfもMaryと同一指示物として解釈されることになる.