アムハラ語の継起形について

若狭 基道(東京大大学院)

アムハラ語(エチオピアの公用語)の動詞には継起形 (gerundive, Converb, 副動詞形等とも)と呼ばれる形が存在する.これは,それ自身の時制・法等は持たず,単独では専ら従属節動詞として用いられる形である.先行研究によれば,継起形が従属節動詞として使われた場合,(A) 主動作の開始時点で既に終えられている動作を表す,(B) 主動作と同時になされる動作を付帯状況として表す,の二つの用法があるとされてきた.

しかし実際には,(B) で述べられていることに相当する事態の総てが継起形で表現出来る訳ではない.(B) に属するとされている(或いは思われる)用例が現れる条件は,意味の観点から以下の4つに下位分類される.

  1. 変化を表す動詞が,継起形動詞として用いられている場合
  2. 継起的関係にある二つの動作が繰返されることを表現している文で,継起形が用いられている場合
  3. 「ある継続期間を伴う一つの動作が終った瞬間に別のある事態が出現する」という関係を表している文で,継起形が用いられている場合
  4. 「ある状態である」「ある状態になる」の二つの意味を持っている動詞が,後者の意味で継起形動詞として用いられている場合

以上のいずれの場合も,二つの動作間に時間的前後関係を認定することが出来る.従って,(B) の用法も (A) の用法の一部であると考えられる.