本発表では,(1)に示されるような,Attract F に課される特定性条件(SC)効果を考察の対象とし,SPELL-OUT及びLFでのSC効果を最小連結条件(MLC)(Chomsky 1995)の違反に還元できることを示した.
本発表でのアイデアは,句の主要部あるいは指定辞のいずれかが限量化されている時は,指定辞・主要部の一致(SHA)により,どちらも限量化され,照合を必要とする素性が,その句の外側に牽引されることが許されない,というものである. SC効果が生じる場合(1)は,概略,次のように,図式化される場合である.
In-situ WH 語の認可のために,LFにおいてWH素性照合牽引がなされるが,(2)から明らかなように,SC効果とは,素性の主要部移動と相対的最小性との相互作用,すなわち,MLCの違反に還元できる,というのが本発表の分析である.ここでの分析により,従来,区別されることなく同等に扱われてきた指定主語を含む(3)のような場合との違いに払説明を与えることができるようになる.
また,MLCに基づく分析によれば,1) 弱限定詞と強限定詞の違い,2) CP指定辞に擬似数量詞even/suraが存在する時,WH語の抜き出しが許されなくなる現象,3) WH島の条件効果の有無,4) WH語の作用域に基づく解釈上の違い,にも統一的な説明を与えることができる.すなわち,(1-4)の非文法性はすべて,LFでの素性照合牽引が,MLCに違反すること,あるいは照合を必要とするWH語の内在的特性の有無,に因るのである.