モダリティと条件文および理由文の交替について

吉良 文孝(日本大)

本発表は,条件文と理由文の交替について,その選択要因をモダリティの観点から考察するものである.条件文と理由文の交替とは,以下の (1)-(2) における if/because,および「のなら/から」の交替を指していう ((2) の状況設定は,B が,(1) でのやりとりの後,A から聞いた情報を第三者に伝えるものとする.なお,文の容認性判断は Akatsuka (1985) による).

(1) A (=Takeda): I'm going to the Winter LSA || 僕,冬のLSAに行くことにしたよ.

B: {If/*Because} you are going, I'm going, too. || 君が行く{のなら/*から}僕も行くよ.

(2) B (toC): I'm going to the Winter LSA {*if/because/since} Takeda is going.

B(が友人 C に): 武田さんが LSA に行く{*のなら/から}僕も行くよ.

上の交替現象について,本発表では,1) 先件命題の事実性いかんが条件文か理由文かの選択に関わり,2) その選択要因には,日英語における本質的な違いはなく,そこには,3) 新情報の共有制約,即ち,「新情報は,その情報提供者と瞬間同時的に・・・・・・その情報を共有することはできない」という認知論的原理が働いていることを確認する.そしてその原理が,以下に見るような wh-疑問文に対する返答や,(主観的)モダリティの疑問化の非容認性をも説明することを指摘する.

(3) Why does he like them? Because/*Since they are always helpful.

(4) (急な来客は A にとってはまったくの新情報として)
A: どうして昨日来なかったの.
B: {φ/*知ってのとおり}急なお客が来たからだよ.

(5) *May the report be true? || *彼は来るかもしれないか.